教室の後ろの方を見る。そこには、この学校で大活躍中のサッカー部のメンバーがいる。しかも、その中には私の大好きな彼氏もいる。
活躍中のサッカー部の一員で、見た目も格好良く、おまけに気も遣えるのに、自信過剰じゃない、何とも自慢の彼氏である。
だけど、今はみんなでゲーム中。そういう真面目すぎないところもいいよね!・・・・・・って、これはただの欲目かしら。
「オイ、佐治ー!!」
ほら、また注目されて・・・・・・って、あれ?あの中に、女の子がいるんだけど?!
いやいや、そりゃ、大活躍中なんだもの。女の子だって見に来るよね。・・・・・・でも、やっぱり気になる。
だって、佐治君、自分で気付いてないだけで、いい男すぎるんだもん・・・・・・!!
そういえば!前にいらっしゃった、私立帝条サッカー部の監督さんとの関係も、ちゃんと聞いてなかったし・・・・・・。
一旦気になると、どんどん気にしちゃうよね・・・・・・。
「はァ〜・・・・・・。」
「どうした?」
「え?!何が?」
「いや、何が、じゃねェよ。今、ため息ついただろ。何かあったのか?」
「え、え〜っと・・・・・・羨望のため息?」
「羨望の・・・・・・?」
佐治君の部活後、いつも通り一緒に帰ってたけど、ついため息をついてしまった。そんな私を佐治君が怪訝な顔で見つめる。・・・・・・うう、そんな表情も格好良すぎる。
「う、うん・・・・・・。蘭原さんって、年下なのにスタイル良いし、顔も可愛いし、マネージャーとしての素質もあるみたいだし、羨ましすぎるなァって。」
「・・・・・・?」
「あと、私立帝条高校サッカー部の監督さんも綺麗だったし、監督ってことはサッカーにも詳しいんだろうし・・・・・・。」
「・・・・・・要は、見た目も良く、サッカー部に関れるような存在になりたいってことか?」
「ん〜・・・・・・、そうなれたら嬉しいけど・・・・・・。と言うより、佐治君の周りって、素敵な女性が多いよねって話かな。」
「・・・・・・暗に、自分もそうだって言いたいのか?いや、だったら、羨望じゃねェよな・・・・・・。」
「うん、そういう意味じゃないよ。」
「?」
佐治君はずっと不思議そうな顔をしている。佐治君って、気は遣えるんだけど、こういうところは鈍感って言うか・・・・・・。いや、そんなところも素敵だけどね!それに、私も遠回しにしか話してないし、わからなくて当然か。
「佐治君のことを信用してないわけじゃないけど、時々心配になるの。今日も、教室に女の子が佐治君のことを見に来てたみたいだし・・・・・・。さっきも言ったように、他にも佐治君の周りには素敵な女性が多い。でも、自分はそうじゃないから、佐治君が他の人のところへ行っちゃいそうで不安になる。・・・・・・ごめんね?こんなワガママなこと言って。」
素直に、でも、あまり重く取られないように笑顔で、自分の気持ちを伝えた。それに対して、佐治君は真剣に聞いてくれている。
・・・・・・これがきっかけで、嫌われたらどうしよう。なんて、今更な考えが出てくるけど、ぐっと堪えて笑顔を保つ。そうしていたら、佐治君が少し笑ってから答えた。
な、なんで笑うの?!
「謝る必要ねェって。だって、それ、妬いてくれてるってことだろ?」
「え・・・・・・。う、うん。そうなるね。」
「だったら、謝らなくていい。と言うか、もっと言ってくれても構わねェ。」
依然として笑顔のままの佐治君。もしかして、さっき笑ったのも、私の嫉妬が嬉しくて、思わず・・・・・・?
「そ、そう?じゃあ、1つ聞いてもいい?」
「何かあるのか?」
「あの・・・・・・私立帝条高校の監督さん、中学生のときに会ったことがあるって言ってたけど・・・・・・どういうきっかけで会ったのか、教えてくれない?やっぱり、気になるから。」
「それか・・・・・・。ただ、中学のときに、私立帝条に入らないか、と言われただけだ。」
「えっ?!それって・・・・・・要はスカウトだよね?」
「そんな大したことでもねェよ。」
佐治君は、ばつの悪そうな顔をした。たぶん、自分の思う以上に評価されたことが少し恥ずかしかったんだろう。本当、佐治君って謙遜しすぎなんだから。
「そっか。じゃあ、佐治君の憧れの人なのか、って聞いたけど、どっちかって言うと、監督さんが佐治君に憧れてたんだね!」
「なっ・・・・・・!変な言い方するなよ・・・・・・!!」
私が少しからかうような発言をしたら、佐治君はものすごく慌て出した。・・・・・・そういう可愛いところも素敵!
・・・・・・なんて、機嫌良くしていたのも束の間。次の日、私は新たな気がかりを見つけてしまった。
人間って、どこまでも欲深くなれるよね・・・・・・。だけど、昨日、佐治君はもっと言ってくれてもいいって言ってくれた。だから、気になったことは言おうと思う!
「佐治君!」
「どうした?」
「佐治君は、なんで天谷君のこと、吏人って呼んでるの?」
それは、きっと、天谷よりも吏人の方が呼びやすかったから、とか、そういう理由だと思う。でも、佐治君は、同じ1年生の及川君は及川、そして彼女の私でさえ、と苗字で呼んでる。それなのに、天谷君だけ名前で呼ばれてるなんてズルイじゃない!
「なんで、って・・・・・・。深い意味はねェけど。」
「じゃあ、質問を変えます。どうして、天谷君は吏人なのに、私はなの?」
「・・・・・・いいのか?」
「何が?」
「その質問は・・・・・・のことを名前で呼んでもいい、って意味にも取れるよな?」
「いいに決まってるじゃない。だって、私たち、ただの友達って関係じゃないでしょ?」
「・・・・・・わかった。ありがとう・・・・・・、。」
自分から言い出したにも拘らず、実際に佐治君にそう呼ばれると、妙に恥ずかしくなった。
「でも、無理に呼ぶ必要はないからね?!その・・・・・・呼び慣れてないだろうし!」
「そんなことねェよ。今、呼んでみてわかった。オレ、の方が呼びやすい。」
「そ、そう?だったら、いいんだけど・・・・・・。」
「だから、オレからもに頼みがある。」
「な、何かな?」
マズイ。佐治君は本当に自然と名前で呼んでくれる。でも、こっちは呼ばれ慣れてなくて、すごくドキドキしてる。
こんなことなら、名前で呼んでほしいなんて言わなければよかった!・・・・・・いやいや、それは違うって。何だか、ドキドキしすぎて、訳が分からなくなってきてる。
「もオレのことは名前で呼んでほしい。」
「え?」
「だって、オレたち、ただの友達って関係じゃないんだろ?」
「そうだね・・・・・・。じゃあ、雪哉く・・・・・・。」
「“君”はなし。」
「・・・・・・。」
「から言い出したことだろ?」
「・・・・・・わかった。わかったよ・・・・・・、雪哉。」
「おう。」
佐治君は爽やかな笑みを浮かべているけど、私の方は真っ赤な顔をしているに違いない。そこへ佐治君は、爽やかな笑顔のまま私に追い打ちをかけ始めた。
「それにしても、がそんなに嫉妬する方だったとは。」
「いや、それは、その・・・・・・。」
「だから、いいって言っただろ?まあ、どれだけ言われようと、オレにはしか見えてねェけど。」
「・・・・・・!」
「そうやって照れてるも可愛いな。」
「さ、佐治君は恥ずかしくないの・・・・・・?!」
「そうじゃねェだろ?」
「う・・・・・・。雪哉は、なんで照れないの・・・・・・?」
「そんなことしてる暇があるなら、恥ずかしがってるを見ていたいと思ってるからじゃねェか?」
それじゃあ、私はずっと佐治君に・・・・・・じゃなかった。雪哉に敵わないってこと・・・・・・?!
そう考えながらも、私が顔を赤くしたままでいると、急に雪哉が吹き出した。そして、いたずらっぽく笑って言った。
「昨日の仕返し。」
・・・・・・そういえば、私も昨日は雪哉をからかったっけ?でも!ここまでじゃなかったよね?!
「ヒドイ!」
「でも、ウソは言ってねェから。」
また、さっきの爽やかな笑顔に戻って、そんなことを言われた。・・・・・・本当に、格好良すぎ。
「じゃあ・・・・・・ヒドくない。」
「何だ、それ。」
こうやって笑い合っていても思うのは、やっぱり雪哉は私には勿体ないぐらいの彼氏だな、ってこと。でも、そう感じられるぐらい幸せってことでもあるんだから、あまり卑屈になってもいけないよねと思うことにした。だって、幸せな時間を無駄にしたくないし、それに佐治君・・・・・・じゃなかった。雪哉を信じてないみたいで悪いもんね。
あと、雪哉って呼ぶことにも、早く慣れないと。・・・・・・いや、これに関しては、早くなくていいかも。だって、慣れない私のことをからかって楽しそうにしてるんだもん。・・・・・・そういう少し意地悪なところも好きだけどね!でも、やっぱり、だからこそ、早く慣れたいかな。そして、私は雪哉の彼女なんだって堂々としていられるようにしたい。それが雪哉を信じてることの証明にもなると思うから。
← Back
Next →
佐治さんも自信を持てない人ですが、私としては自信の持てないヒロインという設定も好きなので、この話ができました(笑)。あと、「雪哉」って書きたかった!!(黙れ)
でも、本当は「雪哉君」の方が好きかもしれませんね。じゃあ、それは帝デッキの方で。
それから、この話を書こうとしたきっかけは、冒頭の女子が気になったから、ですね!コミックをよく読んでみると、この子、天谷君がサッカー部みんなと対決したときも見に来てるんですよ・・・!佐治ファンじゃないでしょうね?!(黙れ)そんな私の思いから、この話を書き始めました(笑)。
最後に、私の妄想推測を書いておくと。たぶん、彼女はよく隣にいるニット帽を被った男の子のことが好きで、彼と一緒に行動してるだけなんじゃないかと思います!(←だから、どうした)
('11/06/09)